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舌下免疫療法とオンライン診療

目次
花粉症のメカニズム
医療機関での一般的な処方薬
舌下免疫療法とは?
どの程度の効果が期待できる?
治療は花粉症シーズンでも始められる?
副作用は?
治療費はどのくらいかかる?
舌下免疫療法と相性のいいオンライン診療

花粉症のメカニズム

花粉症の症状のある方は年々増加傾向で、2017年に東京都が発表した推計によると、都民のスギ花粉症の有病率は48.8%、実に2人に1人が花粉症の有病者というデータもあります。前回10年前に行われた同じ調査では有病率は28.2%であったことから、近年、急激に増加している事がわかります。

参照:花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版


この花粉症、ご存知の通り、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、目のかゆみなどの症状が現れ、QOLが低下するだけではなく、イライラ感、就寝中に鼻腔が詰まってしまうことによって起こる睡眠障害など、職場や学校におけるプレゼンティーイズム(疾病就業)を引き起こし、日常のパフォーマンスにも大きな影響を与えてしまいます。

では、花粉症はなぜ起こるのでしょうか?
まずはそのメカニズムについて説明したいと思います。花粉症は、正式には季節性アレルギー性鼻炎といいます。これは、スギ花粉やヒノキ花粉などの“アレルゲン”に対して、身体がアレルギー反応を起こしている状態のことです。

具体的に鼻の症状で説明すると、花粉が鼻腔内の粘膜に付着し、身体がアレルゲンとみなした場合には、まずそのアレルゲンに対抗するための”抗体”が体内に作られ、その抗体が“マスト細胞”という細胞に結合します。その後再びアレルゲンが侵入すると、 そのマスト細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAFと呼ばれるアレルギー誘発物質が放出されます。

放出されたアレルギー誘発物質のヒスタミンは、鼻の粘膜組織内の知覚神経を刺激するため、くしゃみや鼻水を引き起こします。 同じく、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAFは鼻の鼻甲介の血管を拡張させ、炎症を起こし腫れさせることで、鼻腔を狭くし鼻詰まりの症状を引き起こします。
本来、花粉自体には毒性などはないのですが、身体が花粉を「敵」とみなしてしまう免疫機能の働きによって、つらい症状が引き起こされているのです。

医療機関での一般的な処方薬

そのような花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)に対して、医療機関で従来から処方されてきた代表的な薬剤は、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と呼ばれるものです。
前者の抗ヒスタミン薬では、アレグラ(一般名:フェキソフェナジン塩酸塩)やアレロック(一般名:オロパタジン塩酸塩)、クラリチン(一般名:オロパタジン塩酸塩)をはじめとして、比較的新しいものではビラノアやデザレックスなどが有名です。抗ロイコトリエン薬だと、キプレス(一般名:モンテルカストNa)やオノン(プランルカスト水和物)がよく処方されるお薬となります。

さて、先述のとおりアレルギー誘発物質であるヒスタミンやロイコトリエンは、体内で受容体に結合することでアレルギー反応を引き起こします。例えるならば、鍵(アレルギー誘発物質)と鍵穴(受容体)の関係です。これに対して、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の作用は、薬剤自体が「鍵」の役割を果たし、その鍵穴(受容体)に先回りして結合することで、アレルギー誘発物質が結合できなくしてしまいます。その結果として、アレルギー症状が抑えられるというわけです。

花粉症のお薬はよく「症状が出る前に早めに飲むことが大事」といわれる所以の一つはここにあります。鍵穴の中にアレルゲンが結合してからでは、抗ヒスタミン薬が入り込む隙間がないため、薬が効き始めるのに時間がかかってしまいます。

舌下免疫療法とは?

前項では抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬など、医療機関で従来から使用されてきた薬剤のおおまかな作用機序について解説しました。今回のテーマである「舌下免疫療法」は、それらの薬剤の作用機序とは全く異なるアプローチで花粉症の治療を目指します。「舌下免疫療法」は、アレルゲン免疫療法や減感作療法と言われる治療法に属します。このアレルゲン免疫療法自体は、注射による「皮下免疫療法」として以前から行われてきたものでした。

具体的にどういったものかというと、アレルゲンをあえて体内に取り込むことで、身体を徐々にアレルゲンに慣らしていき、アレルギー症状の緩和や根本的な体質改善を目指す治療法となります。つまり、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬のような“アレルギー誘発物質が働けないようにする作用”とは全く異なり、“アレルゲンが体内に侵入してもアレルギー誘発物質が出ないような身体の状態をつくる”、ということが投薬の目標になります。

舌の下、つまり「舌下」からスギ花粉などのアレルゲンを取り込む「舌下免疫療法」は、2014年にスギ花粉において保険適応となり、翌年ダニアレルギーについても保険適応となり、現在では多くのクリニックで治療がされています。

薬剤としては、シダキュア(スギ花粉)、シダトレン(スギ花粉)、ミティキュア(ダニ)などが鳥居薬品から医療機関向けに発売されています。
現在は、5歳から服薬可能となっており、小児でも治療を行うことができます。

どの程度の効果が期待できる?

さて、気になる効果ですが、どのくらい期待できるのでしょうか。 当院での治療実績を含め、様々な病院・クリニックがインターネットで開示している実績を見ると、約20%は症状が無くなり(緩解)※1、約60%で症状が緩和されたというデータが共通して見られることから、約8割の患者さんには効果があると考えることができます。

※1 症状が一時的あるいは継続的に軽減した状態

また、効果が出始めるのは早ければ8~12週間目となりますが、薬剤の服薬期間は最低2年間で3~5年が推奨されており、長く続けるほど、症状が軽快する傾向が見られています。したがって、副作用などが無ければ、短期間での効果の判断はせずに、まずは2年間ほど試してみて評価するのがよいと考えられます。

では、十分な効果が感じられるまでの期間、花粉症シーズンはどのように対処するのか、ということになりますが、その場合は抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と併用して治療を続けることになります。

治療は花粉症シーズンでも始められる?

続いて、舌下免疫療法の治療を開始する時期についてです。結論からいうと、花粉が飛散している時期(1月~5月)には治療を開始することはできません。理由としては、治療効果の発現には少なくとも8~12週間かかることに加えて、花粉の飛散シーズンはアレルギー反応が起きやすくなっているため副作用(副反応)が起きやすくなるためです。従って、6~7月に治療を開始して、次の花粉症シーズンまでに十分な治療期間を確保するというのが理想的で、遅くとも12月末には治療開始する必要があります。

副作用は?

舌下免疫療法の花粉症治療薬は、化学的に合成した薬剤ではなく、実際の花粉から抽出して作られています。そのため、副作用も花粉によるアレルギー反応の延長上にあります。具体的には、口腔内のかゆみや不快感、のどの刺激感・不快感、耳のかゆみなどです。

また、重大な副作用として蕁麻疹や呼吸困難などを伴うアナフィラキシーショックという強いアレルギー反応が起こることも考えられます。但し、極めて稀であることが報告されており、当院でもこれまでにそのような症例はありません。

当院では、患者さまの安全を確保するために、初めて舌下免疫療法を開始される方には、院内でお薬を処方後、実際にその場で薬剤を摂取いただき、30分ほど副反応の有無の確認をさせていただいております。

治療費はどのくらいかかる?

舌下免疫療法の治療費は、再診で1ヶ月あたり自己負担2,000~3,500円程度(3割負担の場合)となります。初診ではアレルギー検査等を行うため、4,000~5,000円です。
治療費に若干の開きがあるのは、処方される薬剤の種類、院内での処方か調剤薬局での処方か、によって費用が変わってくるためです。一般的には、院内処方のほうが患者さまの自己負担は少なくなります。

舌下免疫療法と相性のいいオンライン診療

以上のように、花粉症の根本治療を目指す舌下免疫療法ですが、実際に治療を始めると、多くの患者さまは“通院負担”という壁にあたってしましいます。
なぜならば、先述のように3~5年という長期間にわたって通院を続けなければいけないということ、また、薬剤は基本的に1ヶ月分の処方となり通院頻度が多くなってしまうためです。 クリニックが混雑するシーズンや風邪やインフルエンザの流行する季節であっても、足繁くクリニックに通わなければなりません。
さらに、継続して薬剤を飲み続けることが前提となっていますので、服薬を中断すると振り出しに戻ってしまうことになります。

そのような中、仕事が忙しくて通院ができなくなったケースや、最近では新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で通院を避け、治療を中断するケースが増えているようです。
そこで、いま、オンライン診療の利用が注目されています。スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能で医療機関の受診ができるオンライン診療を利用すれば、通院負担が大幅に軽減されます。また、院内感染のリスクも極力減らすことができます。

但し、初診においては、確定診断を行うためのアレルギー検査(他院などで行っている場合には参考にさせていただき、必要に応じて検査を行うかどうかを判断いたします)や、はじめての服薬の副作用(副反応)の確認が必要であることから対面診察が必要となります。
いずれにしろ、患者側のメリットの大きいオンライン診療。この機会にオンライン診療を利用した舌下免疫療法を始めてみてはいかがでしょうか。

つなぐクリニックTOKYOのご紹介

つなぐクリニックTOKYOでは、オンライン診療の規制が時限的に緩和される以前から、いち早くオンライン診療を中心とした診療に取り組んできました。主に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に加えて、花粉症(舌下免疫療法)、禁煙補助治療などを行っております。 また、今回の規制緩和を期に、生活習慣病と関わりの深い睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査もオンライン初診で受け入れることになりました。
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下においても、そのような患者さまへ必要な医療を維持するため、オンライン診療を活用した診療体制を今後も拡大し、皆様の健康に貢献していきたいと考えています。

この記事の監修者

つなぐクリニックTOKYO 医師
渡邊 康夫 (わたなべ やすお)
【略 歴】
日本大学医学部大学院修了。
日本大学医学部付属練馬光が丘病院 内科,日本大学医学部附属板橋病院 救命科CCU,川口市立医療センター 循環器科,東京臨海病院 循環器科,敬愛病院 敬愛病院附属クリニックでの勤務を経て、現在に至る。

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