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高血圧 学び | 医師監修

正しい血圧の測り方、知っていますか?

目次
なぜ、血圧を測る必要があるの?
1日の間でもこんなに変わる! 血圧の変動をチェックせよ。
血圧を測ると「その人のライフスタイル」が見える!?
家庭で正しく血圧を測るには?
血圧は毎日測ったほうがいいのでしょうか?
理想的な血圧の数値とは?
上下の値と平行して『平均血圧』にも注目を。
血圧を測ることは「薬に頼らず健康を維持する」第1歩。

『血圧』は、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞などの循環器病のリスクを知るのに大切な指標の1つです。健康診断やクリニック通院時だけでなく、家庭でも日常的に測ることがとても大切です。今回は血圧を測る大切さを「Dクリニック東京ウェルネス監修医師・知久正明先生」に伺いました。

なぜ、血圧を測る必要があるの?

血圧は全身に流れる血流が、血管の壁を押す圧力のこと。心臓がギュッと縮んで全身に血液を送る時の血圧を『最高血圧』(一般的には『上の血圧』)と呼び、収縮した心臓がもとに戻ってふくらんだ時の血圧を『最低血圧』(一般的には『下の血圧』)と呼びます。

「血管は柔軟性に優れ、ゴムのように伸び縮みして血液を全身に送り出します。
血圧が高い場合は、血管が本来の柔軟性を失って硬くなったり、詰まったりしている可能性があります。このような状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中などにつながるケースもあります。
また、血管は全身の臓器とつながっているため、血圧が高いと臓器に圧力がかかり、負担になります。
血圧を測ることは、『血管の状態のチェック』や『将来の疾患のリスク』の把握に有効です。」(知久先生)

1日の間でもこんなに変わる! 血圧の変動をチェックせよ。

血圧は常に一定ではなく、季節によって変動するというのはよく知られています。気温が低い冬は血管が収縮するため、血圧も上昇しやすい。
一方、夏場は血管が拡張し、さらに汗をかいて体内の水分量が減るため、血液量も減って血圧が下がりやすくなります。

「季節だけでなく、1日の間でも血圧の変動は起こります。血圧は朝から昼にかけて、活動に必要な血流を送り出すために少しずつ上昇し、昼頃にピークを迎えます。
夕方にかけてゆるやかに下がり、再度上昇したのち、夜にかけて低下。活動量が減る睡眠中に最も低くなります。
この基本的なリズムに加え、食後やストレスを感じた時など、日常的に発生する些細なことでも血圧は変動します。食後は消化器に血液が集まるため、血圧は下がり、ストレスを感じると交感神経が優位になって血管が収縮し、血圧は高くなります。」(知久先生)

血圧を測ると「その人のライフスタイル」が見える!?

興味深いのは、血圧は「自律神経」と密接に関係しているということ。人はストレスに直面すると、交感神経が優位になり、体を「戦う体制』に導きます。心拍数を早め、血管を収縮させて血圧が上昇します。

「働いている方は、日中に血圧が上がりやすく、主婦の方の場合は、家族が帰宅して家事が増える夕方以降に血圧が高くなるケースも見られます。生活の中でストレスを感じるシーンによって血圧の変動が起こるわけです。
朝に血圧が高い方は、睡眠の質が良くない可能性があります。
睡眠不足が原因で、自律神経やホルモンのバランスに乱れが生じ、血圧が上昇するケースです。このような『早朝高血圧』は、脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がるため、注意必要です。」(知久先生)

このように、血圧はその方の『ライフスタイル』や『ストレス要因』を、鏡のようにうつしだす存在。自身の血圧を測ることは、生活の中に潜むストレスの要因を知り、さらに病気の予防や、治療方針を決める重要な手がかりになります。

家庭で正しく血圧を測るには?

血圧の変動には個人差があり、ライフスタイルも深く関与しています。本来の血圧を知るためには、健康診断やクリニック通院時だけでなく、家庭で定期的に血圧を測る必要があります。

「家庭用の血圧計にはさまざまな種類がありますが、指先に挟むタイプや手首に巻くタイプは、骨が近くに存在するため、測り方によっては誤差が生じる場合があるため、あまりお勧めしません。正しく計測するなら『腕に巻くタイプ』がおすすめです。上腕に巻くと腕にしっかり圧力がかかり、正しい数値が測定しやすいです。
血圧を測る際には、厚手の衣服を避け、腕にきちんと圧力がかかるようにしましょう。」(知久先生)

以下、家庭で正しく血圧を測る方法をまとめてみました。
1日のうち、朝と晩の2回、同じ条件で測定する。
朝は起床後1時間以内に排尿を済ませ、朝食の前に計測する。座って1~2分安静にしてから測定する。
夜は寝る前の安静時に計測する。時間帯に厳密な指定はないが、決まった時間に計測する。朝と同様に座って1~2分安静にしてから測定する。

ちなみに、血圧測定を避けたほうが良い時間もあります。
「運動した直後や飲酒、喫煙をした直後は勿論ですが、食後1時間以内や入浴直後も避けた方がよいでしょう。」(知久先生)

血圧は毎日測ったほうがいいのでしょうか?

「血圧は本来毎日測るのが理想ですが、忙しい現代人の場合、現実的に難しいことも多いでしょう。血圧を測ることがストレスになって、それが血圧の変動に影響しては、本末転倒です。
私がいつも患者さんにお伝えするのは、『平日』と『週末』を組み合わせ、週に2~3回測ってください。そして、『何か特別なストレスがあったとき』に、そのストレス要因を記すとともに測ってください、ということです。」(知久先生)

ライフスタイルと血圧の相関関係を把握しやすくなり、生活習慣病の予防や病気の治療のヒントにつながります。

理想的な血圧の数値とは?

一般的に、若年層より高齢者になるほど血圧も上昇します。これは血管の柔軟性が年齢とともに失われていくためです。しかし、血圧には個人差があり、一概にはいえません。
以下は正常とされる血圧値の目安です。

若年層/中年層
最高血圧(上の血圧)135mmHg以下 最低血圧(下の血圧)85mmHg 以下
後期高齢者
最高血圧(上の血圧)145mmHg以下 最低血圧(下の血圧)85mmHg 以下

この数値は健康診断などで測った1回の血圧で判断することはできません。
なぜならクリニックで医師や看護師が血圧を測ると、緊張から上昇するケースがあるからです。普段生活をしているシーンで血圧を測り、3ヶ月~半年など一定期間観察することで、信頼性が高いデータを得ることができます。

上下の値と平行して『平均血圧』にも注目を。

「血圧を測ると皆さんは『上下の数値』を気にされますね。
もう一つ注目していただきたいのは、『平均血圧の変動』です。
年齢とともに血管が硬くなると、全身に血液を送る『上の血圧』は上昇し、末端から心臓へと戻る『下の血圧』は下降しやすくなります。つまり上下の血圧の差が開いていきます。
この上下の数値ばかりを注視せず、『上の血圧』から『下の血圧』を引いた『平均血圧の変動』を継続的に見ていくことも必要です。
平均血圧が常に高い人は、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まりますから、食生活の改善や、場合によっては医師への相談も検討したほうが良いでしょう。」(知久先生)

血圧を測ることは「薬に頼らず健康を維持する」第1歩。

「血圧を測ること」「血圧が変動する理由を知ること」は、健康維持のためには重要です。
「先に話した通り、朝に血圧が高い方は睡眠に問題がある可能性があります。日付が変わらないうちにベッドに入る、寝る前のスマホの使用を止めるなど、対策を講じることで血圧が安定するケースは少なくありません。

職場で血圧が高い人は、ストレスへの対策が必要です。
根本的な改善は難しかったとしても、根を詰めすぎない、休息の時間を意識して作るなど、対応を考えるきっかけにはなるでしょう。

常に血圧が高い人は、心臓や血管の状態に問題が生じていたりホルモンの乱れが影響していたりする可能性があります。検査をするきっかけや、治療を行うにあたって診療方針の検討材料にもなります。」(知久先生)

血圧を測ることは、病気を未然に防ぎQOL向上に役立ちます。ぜひ家庭でも血圧を測る習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

Dクリニック東京ウェルネス 監修医師
MCS東京銀座クリニック 院長
知久 正明 (ちく まさあき)
【略 歴】
日本大学医学部大学院修了・国立甲府病院・国立循環器病センター・日本大学医学部循環器 内科・敬愛病院付属クリニック院長・MCS東京銀座クリニックを開業

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