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生活習慣病 学び | 管理栄養士監修

高尿酸血症(痛風)と食事・栄養素の関係

目次
生活習慣と高尿酸血症・痛風
高尿酸血症の予防に必要な生活習慣の修正項目
高尿酸血症と栄養素の関係【食事】
高尿酸血症と栄養素の関係【運動】

生活習慣と高尿酸血症・痛風

高尿酸血症・痛風は、生活習慣病の1つであり、食生活や飲酒習慣と関連があります。
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断され、痛風予備軍に位置付けられます。尿酸の飽和濃度(7.0mg/dL)を超える高尿酸血症状態が長期間放置されると、痛風になります。痛風の症状は、尿酸が足の親指等の関節に沈着し、炎症を起こし、激しい痛みが生じます。

尿酸はプリン体という物質が体内で分解されてできます。
プリン体は、臓器を動かしたり運動したりするエネルギー源の構成成分で、DNA(デオキシリボ核酸)やATP(アデノシン三リン酸)を構成しています。
一般的に、人の体内では、1日0.6mgの尿酸が作られますが、過剰に合成されることや、尿酸・便中への排泄量が低下すると、体内で尿酸が蓄積されます。その結果、血清尿酸値が増加し、痛風や尿路結石などの合併症を引き起こします。

また、高尿酸血症は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、尿路結石症、メタボリックシンドロームと合併することが多いと言われています。痛風発作や合併症を予防するためには、生活習慣の是正がとても重要です。

高尿酸血症の予防に必要な生活習慣の修正項目

生活習慣病の1つである高尿酸血症の治療には、薬物療法の有無にかかわらず、生活習慣の改善は治療の根幹となります。 高尿酸血症・痛風の生活習慣の基本は、食事・適切な飲酒習慣・運動が基本だと、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインに記載されています。
生活習慣を整え、体内で過剰に尿酸が合成されないようにし、対外への排泄を促すことで、体内に尿酸が過剰蓄積されないようにすることが重要です。

次は、高尿酸血症に効果的な食事や飲酒習慣、運動について詳しく説明していきます。

高尿酸血症と栄養素の関係【食事】

1. エネルギー

体重の減少とともに血清尿酸値は、改善されると言われています。
血清尿酸値が高く、肥満と判定されている方は食べ過ぎに注意し、適正体重を目標に減量することが効果的です。ただし、急激な体重減少は、逆に血清尿酸値を上昇させてしまうおそれがあるので注意が必要です。

体重の増減は、摂取したエネルギー量と消費したエネルギー量のバランスで決まります。自分自身の必要なエネルギー量と、現在摂取しているエネルギー量を照らし合わせ、減量の計画を立ててください。必要なエネルギー量は下記の式で求めることができます。

目標とする摂取エネルギー量の求め方
【 ①標準体重を計算 】
BMI法・・・標準体重(kg) = (身長( m ))2 × 22
【 ②摂取エネルギー量を計算 】
軽労働者(デスクワークが主体):25〜30kcal × 標準体重
中労働者(立ち仕事が主体):30〜35kcal × 標準体重
重労働(力仕事が主体):35kcal〜 × 標準体重
高度肥満者:20kcal × 標準体重
 

減量のペースは、1ヶ月あたり1〜2kg減が望ましいとされています。算出したエネルギー量と現在の食事量に大きな差がある方は、急激に減らさず、現在の食事量から1日 200〜300kcal、1食あたりにすると、80〜100kcal削減してください。また、間食の量と内容を見直すこともお勧めします。
食べ方のポイントとしては、食事は腹八分目とし、よく噛んでゆっくり味わいながら食べることで、脳の満腹中枢を刺激し、満腹感が得られます。

2. プリン体

プリン体の過剰摂取は尿酸値を上げる原因になります。食品に含まれるプリン体が体内で尿酸に代謝されて、血清尿酸値を上昇させるためです。 プリン体は、美味しいものや細胞数が多い食品に多く含まれています。プリン体が多く含まれる食品には、レバーなどの動物の内臓やマイワシなどの魚の干物が挙げられます。
一方で、牛乳やチーズなどの乳製品はプリン体含量が少ない良質なタンパク質源です。高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインによれば、プリン体の1日の摂取量は400mg程度と定められています。各食品100gに含まれるプリン体の量を表に示します。

表 食品中のプリン体含有量(100gあたり)

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」

3. 果糖

果糖はショ糖(砂糖)の構成成分です。果糖は、体内で代謝される際にプリン体の分解が進み、血清尿酸値が上昇します。さらに、ショ糖(砂糖)の摂りすぎは、痛風発症のリスクになるため、甘味飲料や果物ジュースは控えてください。

血清尿酸値を下げる食品
コーヒー、チェリー、乳製品(特に低脂肪のもの)は、痛風のリスクを下げることがわかっています。ビタミンCや食物繊維が豊富な食品にも同様の効果があります。さらに、近年、提案された2つの食生活スタイルが、血清尿酸値を下げる効果があります。
【 ①DASH食 】
果物、野菜、ナッツ、低脂肪乳製品、全粒穀物、豆類を多く摂り、食塩、甘味飲料、肉類の摂取を減らす。
【 ②地中海食 】
果物、野菜、ナッツ、豆類、全粒穀物、乳製品を毎日、魚類を週2会程度食し、肉類、甘味、菓子類の摂取量を減らす。

4. 水分

尿量の増加は、尿酸の排泄増加につながります。水分摂取を制限しないといけない疾患でない限り、尿量が1日2L以上になることを目標に飲水量を増やします。十分な水分補給は尿路結石等の合併症予防にも効果的です。砂糖や果糖が含まれた飲み物は、エネルギーの摂りすぎや、尿酸値を上昇させる場合があるので、注意が必要です。

5. アルコール(飲酒習慣)

アルコールが血清尿酸値を上げる機序は、以下の通りです。
・アルコールの分解を行うために尿酸の生成が促進される。
・アルコールを代謝される際に上昇する乳酸が尿酸の尿排泄を抑制する。

焼酎には、プリン体が含まれていません。しかし、いかなる種類のアルコール飲料でも大量に摂取すれば血清尿酸値を上昇させます。
アルコール飲料の適量としては、1日20〜25g以下、すなわち、ビール500mL(中瓶1本)、日本酒180mL(1合)、ワイン125mL(グラス1杯)、ウイスキー60mL(ダブル1杯)、焼酎90mL程度のいずれかとなります。さらに、休肝日を設けることは、尿酸値の上昇をより抑制することができます。

おつまみに関しても、エネルギーが少なく、プリン体含有量の少ないものを選んでください。例えば、焼き鳥だとレバーよりもモモ肉やささみがお勧めです。

高尿酸血症と栄養素の関係【運動】

継続的に運動を行う方は、血清尿酸値が低いということがわかっています。運動は、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの心拍数が少し上がる程度の有酸素運動が効果的です。少なくとも1回10分以上の運動を、1日合計30〜60分程度行うことが推奨されています。運動の前後には、水分を摂り、発汗による脱水に注意してください。

生活習慣の改善はなによりも継続することが大切です。無理のないところから始め、家族や周囲の方、管理栄養士などの専門職の方の協力を得ながら、中長期的に改善していきましょう。

 

この記事の監修者

管理栄養士
上原 優子 (うえはら ゆうこ)
【略 歴】
聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科博士課程修了。管理栄養士。博士(医学)。
聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 研究員を経て、現在は、機能強化型在宅療養支援診療所に勤務し、訪問栄養指導を行っている。